公開日:2025年10月27日 (M筆)
ブーニンさんのピアノコンサートが、このたび熊本で無事に開催されました。昨年は体調不良のため公演中止となっていましたが、今回は再起を果たしたピアニストへの期待と熱意で、会場は満員御礼となりました。

ブーニンさんといえば、やはり有名なのは、ショパン国際ピアノコンクールで披露されたショパンの「革命」ではないでしょうか。楽しそうにピアノを弾く姿、まるで太鼓を打つかのような力強い打鍵でありながら、決してうるさくなく心に突き刺さる音楽は、動画上でも圧巻でした。あれが生で聞けたら、と願っていた日が叶いました。
私にとって初めてのブーニンさんの生演奏です。今回の演目にはショパンの「別れの曲」の演奏が予定されているとのことで、そちらにも強く惹かれて会場へ向かいました。19歳で輝いていた頃のブーニンさんの若い姿は動画で知っていましたが、最近の様子はわかりませんでした。実際にお見かけしたブーニンさんは、品よくお年を召された印象でした。
ピアニストを襲った「沈黙」と「短縮障害」
天才を襲った容赦ない苦難
今回パンフレットで初めて知ったのですが、ブーニンさんはショパンコンクールでの華々しい優勝(史上最年少19歳)の後、数多くの病気や怪我を抱えていました。
- ピアニストの命ともいえる**左手、肩に制限をかける病気**
- 転倒による左足の骨折と、切断の危機を回避した後の**左足の短縮障害**(手術の後遺症)
ピアノは手で音程やリズムを、足元で音色を色付ける、両方が必要不可欠な楽器です。これらの苦難は、容赦なく彼を襲ったのです。そして、2022年にようやく復帰。彼の「沈黙と再生」の物語は、多くの人々の感動を呼びました。
ロマン派の叙情が深く心に響く
今回の公演では、**ショパン、シューマン、メンデルスゾーン**というロマン派を代表する3名の音楽が奏でられました。

彼らが活躍したロマン派の時代は、古典派(モーツァルト、ベートーヴェンなど)の厳格な形式から解放され、個人の感情や文学性、想像力を重視する音楽が中心となった時代です。
このロマン派ならではの情緒に訴えかけるような表現は、数多くの苦難を乗り越え、さまざまな心境を経験した今のブーニンさんにしか出せない深みを感じさせてくれました。
特に感動した3曲
- **ショパンの「雨だれ」**
- **ノクターン第20番「遺作」**
- **メンデルスゾーンの「甘い思い出」**
甘く流れる繊細なタッチや音の粒は、優しさが伝わり、特に高音は印象的でした。また、不思議なことに彼の低音部には、誰かがどこかで歌っているかのような声が、さらに奥から響いてくるように感じられました(音響の関係かもしれませんが)。人の言葉では言い表せない感情を音楽は表しており、彼の人生そのものを凝縮したような、奥深い演奏でした。
映画公開も決定!天才の軌跡をたどる
ショパンの「別れの曲」は残念ながら演奏されず、アンコールもお疲れのためかありませんでしたが、彼の人生を音楽を通して知ることができた、非常に価値ある体験でした。
彼の人生を描くドキュメンタリー映画『ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』も来年**2026年2月20日(金)**に公開予定です。ぜひ劇場で、天才ピアニストの軌跡を見届けたいと思います。
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